BtoBサブスクビジネス実態調査2026「AIが壊す、BtoBサブスクの2つの常識」

発行
株式会社オプロ / 2026年6月
目次
-- 調査概要と読み方
-- Executive Summary
第1章 「SaaS is dead」はBtoBサブスクに何を問うか
第2章 AIが変える料金設計とサービス提供
第3章 料金設計見直しの壁と突破口
第4章 AI-BPO、業務代行型への転換
第5章 現在地から考える次の一手
付録 本レポート参照設問の単純集計
調査概要と読み方
本レポートで扱うデータはすべて株式会社オプロが2026年4月に実施した調査に基づいています。外部データを引用する際は「市場分析」と明示し、本調査データと区別しています。
調査実施期間 2026年4月24日〜27日
調査委託先 楽天インサイト株式会社
調査手法 インターネット調査(オンラインパネル)
有効回答数 300名(ITサービス・SaaS 91名 / 非IT 209名)
調査対象 BtoBサブスク事業の運営に携わる担当者・責任者。事業経験7年以上が48%、従業員1,000名以上が37%を占める。
業種構成 製造・メーカー31%、ITサービス・SaaS30%、金融・保険9%、医療・ヘルスケア9%、教育・研修4%、コンサルティング・士業4%、メディア・情報サービス4%、その他9%。
免責事項 本レポートの内容は調査実施時点(2026年4月)の情報に基づきます。回答はすべて自己申告によるものです。データの引用・転載は出典明記の上でご自由にお使いください。
© 2026 株式会社オプロ 発行:2026年6月
Executive Summary
92%
シート課金を料金体系に持つ企業の92%が、現行の料金体系に不安を感じている
「強く感じている」23.4%、「やや感じている」68.8%。AIが1ライセンスで複数人分の業務をこなす時代に、ユーザー数単位の課金モデルの根拠が揺らいでいます。Q21
※シート課金を料金体系に含む企業のみ対象(n=128 / 全体の42.7%)
88%
業務代行を志向する企業は88%。サービスを提供するから「業務を担う」へ
「すでに取り組んでいる」36.7%、「今後取り組みたい」51.6%。AIの普及が業務の境界を変え、ツールを売るから業務を担う方向へと事業形態のシフトが進んでいます。Q24
あわせて注目したい数字
AIを起因とした解約・契約縮小をすでに経験しているサービス提供企業は24.7%に上る。AIを理由とした値下げ要求は10.7%にとどまるが、解約・契約縮小を報告した企業はその倍以上。顧客側がAIの普及の中でサービス利用の必要性を見直し始めている表れです。
Q14
料金見直しを阻む最大の障壁として54.8%が「既存顧客への影響」を挙げた。
Q19
AI-BPOをすでに実施しているのはITサービス・SaaSで41.8%、コンサルティング・士業でも46.2%(参考値)にのぼります。専門知識を価値として売ってきた業種が積極的に動いています。
Q24
AIの普及が自社事業にプラスと答えた事業者は71%、マイナスは16%にとどまる。「SaaS is dead」という議論をよそに、業界全体はAIをチャンスとして捉えています。
Q12

本調査で使用する「AI-BPO」の定義については第2章で詳述します。

第1章
「SaaS is dead」はBtoBサブスクに何を問うか
SaaS業界を中心に議論されてきたこの言葉ですが、実はBtoBサブスク全体にも当てはまることがあります。本調査のデータは、その問いに答えます。

「SaaS is dead」とは何か

2024年末、MicrosoftのCEOサティア・ナデラが「AIがSaaSの役割を塗り替える」と語ったことで「SaaS is dead」というフレーズが広まりました。この時点では、SaaSの消滅を示唆するものではなく、変化を語ったものです。その後、自然言語で指示するだけで複数のツールをまたいで業務を完結させるAI製品・サービスが相次いで登場し、「ユーザーがSaaSにログインして操作する」という前提そのものが問い直されています。2025〜2026年にかけてSaaS関連株の大幅な調整が複数回起き、投資家・経営者の双方でこの議論の現実感が高まっています。

この議論が示す本質

「SaaS is dead」が問いかけているのは、2つの構造的な変化です。

課金モデルの再定義。シート課金(利用ユーザー数に応じた月額課金)はユーザー数を根拠にしてきました。AIが1ライセンスで複数人分をこなし始めている今、その根拠は問われ始めています。利用量か、処理件数か、業務の成果か課金の再設計が求められています。
サービスへの対価の前提が変わる。AIが業務を直接担い始めている中で、「そのサービスに対価を払う理由」という問いが生まれています。たとえばソフトウェアツールの利用料しかり、専門家が継続的に提供するサービスへの対価しかり業種や形態を問わず、BtoBサブスクが「なぜ払われるのか」という根拠の問い直しが起きています。

これはSaaSだけの問題ではない

製造の機器保守・IoTサービス、医療の定期サポート、金融の法人顧問、コンサルティングの定額支援いずれも継続的なサービスを価値の核にしたBtoBサブスクです。本調査が示すのは、課金モデルの再定義とサービス提供形態の転換という2つの変化がIT業界を超えて日本市場で同時進行しているということです。業種を問わず同じ方向の変化が起きていることは、下表から読み取れます。

AIの普及が事業に与える影響(n=300)
ITサービス・SaaS n=91 / 非IT n=209 ※業種別の詳細比較はこの第1章のみ
指標 ITサービス・SaaS 非IT
AIの普及の中での解約・縮小を経験した割合 Q14 22.0% 25.8%
料金体系の見直しを最重要課題とする割合 Q31 8.8% 19.1%
顧客から業務代行・運用支援の要望が増えた割合 Q14 23.1% 32.1%
第2章
AIが変える料金設計とサービス提供
この1〜2年で7割以上が料金構造を変えました。同時に、業務代行型への意向も88%に達しています。料金設計とサービス提供。AIが2つの変化を同時に引き起こしています。

料金変化が示す市場の圧力

料金変化の方向(Q9、n=300)
多層化・複合化した
49.3%
シンプルにした
24.0%
ほぼ変えていない
21.7%
わからない
5.0%

この1〜2年で料金構造を変えた企業は7割を超えます。変化のきっかけは「競合他社の動き」56.8%、「顧客要求の変化」48.2%、「AIを含む技術変化」44.5%が三大要因です。Q10 変化の方向は二分しており、「多層化・複合化した」49.3%に対し「シンプルにした」24.0%と多層化が倍以上。「競合と差別化できていない」28.3%、「複雑で顧客に説明しにくい」26.0%という課題を感じながら、変化の途上にある状況がうかがえます。Q11

AIの普及によって顧客の行動・要求にどのような変化があったかを聞きました。

顧客行動・要求の変化(Q14、MA・最大3つ、n=300)
複数回答のため合計は100%を超えます
AIツール連携の要望が増えた
45.7%
業務代行の要望が増えた
29.3%
解約・契約縮小が進んだ
24.7%
サービス水準への期待向上
19.7%
特に変化はない
19.0%
AI理由の値下げ要求
10.7%

AIの普及による影響として、提供するサービスの解約・契約縮小が進んだと報告した企業は24.7%に達しています。値下げ要求は10.7%あり、解約には至っていないものの、顧客がサービスへの対価を問い直し始めているサインです。一方、AIツールとの連携・統合を求める声は45.7%にのぼり、これは機会でもあります。SaaSであればAI連携、製造であれば予知保全・IoTデータ分析、コンサルであれば分析の高度化AIを取り込んだサービスへの期待として読むことができます。

シート課金の実態

シート課金を料金体系に含むと答えた128社(全体の42.7%)の実態を見てみます。Q6

シート課金継続への不安(Q21、n=128)
※シート課金を料金体系に含む企業のみ対象(n=128 / 全体の42.7%)
シート課金継続への不安(計)
92.2%
n=128 / シート課金利用企業
Q21 シート課金継続への不安(SA、n=128)
23.4%
68.8%
強く感じている 23.4% やや感じている 68.8%

シート課金は顧客の成長とともに売上が拡大する構造でした。AIの活用により少人数でも同じ成果を出せるようになると、シート数は増えない。この構造変化が9割超の不安の根拠になっています。

市場分析  外部データに基づく

米国ではシート課金を主力とするSaaS企業の比率が21%から15%に下落しました。(Growth Unhinged 2026年2月)

たとえばシート課金を主力としてきたSalesforceは、AIエージェントプラットフォーム「Agentforce」の2024年秋リリース時に、会話1件あたり2ドルの課金モデルを採用。その後2025年5月に「Flex Credits」を導入しました。AIが実行した個別タスク1件あたり0.10ドルの従量課金です。さらに月額125ドルのユーザー単位課金(シート課金)も選択肢に加え、約18ヶ月で成果連動・従量・シートと3つのモデルを並存させています。世界最大のCRM企業ですら「どう課金するか」の正解を模索し続けています。(PricingSaaS 500 Index 2026年2月、Salesforce公式 2025年5月)

不安と行動のギャップ

ただし、不安と行動には大きなギャップがあります。シート課金が主力の企業(n=72)の料金見直し着手率は12.5%と全体平均22%を下回ります。92%が不安を感じているにもかかわらず、実際に動いているのは8社に1社。Q7×Q18 その背景のひとつに、代替案の見えにくさがあると考えられます。シートに代わる課金の根拠を、利用量や成果などに定めることは、サービスの価値定義そのものを問い直すことを意味します。

AIへの向き合い方

AIの普及が自社事業にプラスと答えた事業者は71%、マイナスは15%。Q12 チャンスと捉えている企業が何に動こうとしているか、次の設問が示しています。

今後の優先取り組み(Q32、n=300)
AI新機能・新サービス開発
35.3%
業務代行・拡張(AI-BPO)
25.7%
料金体系・課金モデル見直し
12.3%
収益・契約管理の仕組み整備
12.3%
特に取り組む予定はない
8.7%

今後の優先取り組みとして、新機能・新サービス開発が35.3%、AI-BPO化が25.7%と、ビジネスの拡張という方向を向いている企業が多く、合わせると6割超。これが71%が「プラス」と感じている根拠の一つです。

AI-BPOへの意向

AIの普及によってサービス提供範囲がすでに拡大したと報告する企業は59%。利用権のみの提供にとどまる企業は33%にすぎず、54%はすでに導入支援・初期設定まで含めてサービス化しています。Q22Q23 ツールの外側に価値を積み上げる動きは、AI-BPO以前からすでに始まっていました。たとえば請求書発行システムの提供者が、請求書発行から入金確認・督促まで一括で請け負うケースは以前から一部でありました。

今回、AIの活用により採算ラインが大幅に下がり、従来は大手BPO業者や一部の事業者にしかできなかった業務代行が、BtoBサブスク事業者全般で成立するようになっています。本レポートではこの動きを「AI-BPO」と呼びます。(なお、AI-BPOの本質は顧客の業務プロセスの遂行責任を担うことであり、自社サービスにAIを組み込んで機能を高めること(AIを取り込んだサービス)とは区別します。)

AI-BPOへの意向(Q24、n=300)
AI-BPOへの意向(計)
88%
n=300 / 全体
Q24 AI-BPOへの意向(SA、n=300)
36.7%
51.6%
11.7%
すでに取り組んでいる 36.7% 今後取り組みたい 51.6% 予定なし 11.7%

すでに取り組んでいる37%を含め、意向あり(実施中+今後)の合計は88%です。推進力は顧客要望が57.4%、競合の動向が33.2%、AIによるコスト削減が27.9%の三方向から働いており、単一の要因ではなく市場全体の流れとなっています。Q25

市場分析  外部データに基づく

AIの導入によりバックオフィス業務の処理コストが大幅に低下しており、業務代行の採算ラインが下がっています。Zendeskが問い合わせ自律解決時のみ課金する成果連動型に移行するなど、「業務を代行して成果で課金する」形態はHfS Researchが指摘するServices as Softwareの潮流とともに広がっています。(McKinsey、HfS Research、Zendesk公式)

第3章
料金設計見直しの壁と突破口
第2章では、プランの多層化・シンプル化など広い意味での料金変更として、7割超が実施していました。Q9 本章では、AIの影響を踏まえた料金設計の見直しにテーマを絞り、動けない理由・動けたきっかけ・動いた先の3つの視点から整理します。

料金見直しの3層

着手層
22%
料金体系の見直しに着手している
Q18「すでに取り組んでいる」66社。変化に踏み込み、すでに次の問題に向き合っています。
検討層
50%
必要性を感じて検討中だが、まだ動いていない
Q18「検討中」150社。問題意識はありますが、障壁を前に立ち止まっています。この集団の動きが市場の分水嶺となります。
未着手層
28%
動けていない、または必要と感じていない
Q18「必要だが動けない」21.7%+「必要と感じない」6.3%の84社。前者は障壁があって動けない、後者はまだ問題意識に至っていない企業です。

この3つの集団はなぜ分かれているのか。動けない企業の障壁と、それでも動き出した企業のきっかけをデータで見ていきます。

動けない企業の障壁

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本資料における著作権は、株式会社オプロに帰属します。引用・転載の際は、下記の出典を明記のうえご利用ください。

出典:『BtoBサブスクビジネス実態調査 2026』サブスクビジネス研究所(2026年4月調査)

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