2026年06月02日 公開
BtoBサブスクビジネス実態調査2026「AIが壊す、BtoBサブスクの2つの常識」
| 調査実施期間 | 2026年4月24日〜27日 |
| 調査委託先 | 楽天インサイト株式会社 |
| 調査手法 | インターネット調査(オンラインパネル) |
| 有効回答数 | 300名(ITサービス・SaaS 91名 / 非IT 209名) |
| 調査対象 | BtoBサブスク事業の運営に携わる担当者・責任者。事業経験7年以上が48%、従業員1,000名以上が37%を占める。 |
| 業種構成 | 製造・メーカー31%、ITサービス・SaaS30%、金融・保険9%、医療・ヘルスケア9%、教育・研修4%、コンサルティング・士業4%、メディア・情報サービス4%、その他9%。 |
| 免責事項 | 本レポートの内容は調査実施時点(2026年4月)の情報に基づきます。回答はすべて自己申告によるものです。データの引用・転載は出典明記の上でご自由にお使いください。 |
※シート課金を料金体系に含む企業のみ対象(n=128 / 全体の42.7%)
本調査で使用する「AI-BPO」の定義については第2章で詳述します。
「SaaS is dead」とは何か
2024年末、MicrosoftのCEOサティア・ナデラが「AIがSaaSの役割を塗り替える」と語ったことで「SaaS is dead」というフレーズが広まりました。この時点では、SaaSの消滅を示唆するものではなく、変化を語ったものです。その後、自然言語で指示するだけで複数のツールをまたいで業務を完結させるAI製品・サービスが相次いで登場し、「ユーザーがSaaSにログインして操作する」という前提そのものが問い直されています。2025〜2026年にかけてSaaS関連株の大幅な調整が複数回起き、投資家・経営者の双方でこの議論の現実感が高まっています。
この議論が示す本質
「SaaS is dead」が問いかけているのは、2つの構造的な変化です。
これはSaaSだけの問題ではない
製造の機器保守・IoTサービス、医療の定期サポート、金融の法人顧問、コンサルティングの定額支援いずれも継続的なサービスを価値の核にしたBtoBサブスクです。本調査が示すのは、課金モデルの再定義とサービス提供形態の転換という2つの変化がIT業界を超えて日本市場で同時進行しているということです。業種を問わず同じ方向の変化が起きていることは、下表から読み取れます。
| 指標 | ITサービス・SaaS | 非IT |
|---|---|---|
| AIの普及の中での解約・縮小を経験した割合 Q14 | 22.0% | 25.8% |
| 料金体系の見直しを最重要課題とする割合 Q31 | 8.8% | 19.1% |
| 顧客から業務代行・運用支援の要望が増えた割合 Q14 | 23.1% | 32.1% |
料金変化が示す市場の圧力
この1〜2年で料金構造を変えた企業は7割を超えます。変化のきっかけは「競合他社の動き」56.8%、「顧客要求の変化」48.2%、「AIを含む技術変化」44.5%が三大要因です。Q10 変化の方向は二分しており、「多層化・複合化した」49.3%に対し「シンプルにした」24.0%と多層化が倍以上。「競合と差別化できていない」28.3%、「複雑で顧客に説明しにくい」26.0%という課題を感じながら、変化の途上にある状況がうかがえます。Q11
AIの普及によって顧客の行動・要求にどのような変化があったかを聞きました。
AIの普及による影響として、提供するサービスの解約・契約縮小が進んだと報告した企業は24.7%に達しています。値下げ要求は10.7%あり、解約には至っていないものの、顧客がサービスへの対価を問い直し始めているサインです。一方、AIツールとの連携・統合を求める声は45.7%にのぼり、これは機会でもあります。SaaSであればAI連携、製造であれば予知保全・IoTデータ分析、コンサルであれば分析の高度化AIを取り込んだサービスへの期待として読むことができます。
シート課金の実態
シート課金を料金体系に含むと答えた128社(全体の42.7%)の実態を見てみます。Q6
シート課金は顧客の成長とともに売上が拡大する構造でした。AIの活用により少人数でも同じ成果を出せるようになると、シート数は増えない。この構造変化が9割超の不安の根拠になっています。
米国ではシート課金を主力とするSaaS企業の比率が21%から15%に下落しました。(Growth Unhinged 2026年2月)
たとえばシート課金を主力としてきたSalesforceは、AIエージェントプラットフォーム「Agentforce」の2024年秋リリース時に、会話1件あたり2ドルの課金モデルを採用。その後2025年5月に「Flex Credits」を導入しました。AIが実行した個別タスク1件あたり0.10ドルの従量課金です。さらに月額125ドルのユーザー単位課金(シート課金)も選択肢に加え、約18ヶ月で成果連動・従量・シートと3つのモデルを並存させています。世界最大のCRM企業ですら「どう課金するか」の正解を模索し続けています。(PricingSaaS 500 Index 2026年2月、Salesforce公式 2025年5月)
不安と行動のギャップ
ただし、不安と行動には大きなギャップがあります。シート課金が主力の企業(n=72)の料金見直し着手率は12.5%と全体平均22%を下回ります。92%が不安を感じているにもかかわらず、実際に動いているのは8社に1社。Q7×Q18 その背景のひとつに、代替案の見えにくさがあると考えられます。シートに代わる課金の根拠を、利用量や成果などに定めることは、サービスの価値定義そのものを問い直すことを意味します。
AIへの向き合い方
AIの普及が自社事業にプラスと答えた事業者は71%、マイナスは15%。Q12 チャンスと捉えている企業が何に動こうとしているか、次の設問が示しています。
今後の優先取り組みとして、新機能・新サービス開発が35.3%、AI-BPO化が25.7%と、ビジネスの拡張という方向を向いている企業が多く、合わせると6割超。これが71%が「プラス」と感じている根拠の一つです。
AI-BPOへの意向
AIの普及によってサービス提供範囲がすでに拡大したと報告する企業は59%。利用権のみの提供にとどまる企業は33%にすぎず、54%はすでに導入支援・初期設定まで含めてサービス化しています。Q22Q23 ツールの外側に価値を積み上げる動きは、AI-BPO以前からすでに始まっていました。たとえば請求書発行システムの提供者が、請求書発行から入金確認・督促まで一括で請け負うケースは以前から一部でありました。
今回、AIの活用により採算ラインが大幅に下がり、従来は大手BPO業者や一部の事業者にしかできなかった業務代行が、BtoBサブスク事業者全般で成立するようになっています。本レポートではこの動きを「AI-BPO」と呼びます。(なお、AI-BPOの本質は顧客の業務プロセスの遂行責任を担うことであり、自社サービスにAIを組み込んで機能を高めること(AIを取り込んだサービス)とは区別します。)
すでに取り組んでいる37%を含め、意向あり(実施中+今後)の合計は88%です。推進力は顧客要望が57.4%、競合の動向が33.2%、AIによるコスト削減が27.9%の三方向から働いており、単一の要因ではなく市場全体の流れとなっています。Q25
AIの導入によりバックオフィス業務の処理コストが大幅に低下しており、業務代行の採算ラインが下がっています。Zendeskが問い合わせ自律解決時のみ課金する成果連動型に移行するなど、「業務を代行して成果で課金する」形態はHfS Researchが指摘するServices as Softwareの潮流とともに広がっています。(McKinsey、HfS Research、Zendesk公式)
料金見直しの3層
この3つの集団はなぜ分かれているのか。動けない企業の障壁と、それでも動き出した企業のきっかけをデータで見ていきます。
動けない企業の障壁

調査データのご利用に関して
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出典:『BtoBサブスクビジネス実態調査 2026』サブスクビジネス研究所(2026年4月調査)
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