SaaSビジネス成功の秘訣とは?

SaaSビジネスの成功には、早い段階からユーザと一緒にプロダクトを作ることが大事

"先駆者に聞く"では、サブスクリプションモデルのビジネス(以下、サブスクビジネス)に携わる人に、サービスにおける運営の秘訣や大切にしていることなどを伺い、サブスクビジネスを成功させるヒントを掴むためのコンテンツをお届けします。
今回は、経済ニュースメディアの「NewsPicks」や経済情報プラットフォームの「SPEEDA」などを提供している株式会社ユーザベース 経営基盤担当執行役員の張替誠司氏にお話を伺います。

Q:まずはユーザベースで張替さんが担当しているサービスについて教えてください。

ユーザベースにはいくつかの事業がありますが、その中で「SPEEDA」「FORCAS」「INITIAL」に携わっています。SPEEDAは企業や業界データをはじめとした経済情報を素早く集められる経済情報プラットフォームで、企業戦略の分析や策定に必要な情報を提供します。現状、新型コロナウイルスの影響で企業を取り巻く環境は複雑に変化しています。現在の状況から、たとえば経営企画部門は、これからの中国ビジネスにどのような影響が出るのか、また働き方改革で企業を取り巻く環境がどう変わるかも把握したい。これらを理解するためにインターネットで検索しても、なかなか必要な答えは得られません。

SPEEDAは様々なビジネスシーンで必要とされる情報に素早くアクセスでき、2020年9月現在、1,400社を超える企業が利用しています。世界中の800万社以上の情報が蓄積されており、個別企業だけでなく、それぞれの業界に関する情報も網羅しオリジナルコンテンツも豊富に用意しています。また業界では括れないものや最新技術などトレンドについても、専門家による知見と共に提供しています。

SPEEDAから派生したサービスとなるのがFORCASです。これは企業がABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の実践を強力にサポートするためのマーケティングプラットフォームです。ABMはデータ分析に基づいて成約確度の高いアカウント(企業)を予測し、マーケティングと営業のリソースをそのターゲットアカウントに集中するマーケティング手法です。FORCASは144万社以上の基本情報や業界区分データを保有しています。
さらに「超高成長」「海外進出」「働き方改革」「営業職を募集している」「MAツールを利用している」など、企業の状況やニーズを表すFORCAS独自の「シナリオ」データから企業やサービスに合わせたターゲットの特定が可能になります。

もう1つのINITIALでは、スタートアップ企業の情報を提供しています。現状、スタートアップ企業には一意な定義はありません。上場か非上場かですら明確ではないため、スタートアップ企業に関する情報がしっかりとまとめられておらず、国内のスタートアップ企業の市場規模すら定かではありません。
INITIALでは、独自にスタートアップ企業を定義し、企業のファイナンス情報と紐付け、スタートアップ企業のデータを構造化し集約しています。これにより、2019年のスタートアップ企業の資金調達額がいくらで、ベンチャーキャピタルはどこにどのような投資をしているかも分かります。INITIALを使えばスタートアップ企業の全体感を掴め、国内スタートアップに対する投資、M&A、事業提携、営業など様々な目的で活用されています。

Q:具体的にはどのような業務を担当されているのでしょうか。

私は2019年3月にユーザベースグループの株式会社FORCASに入社しました。当時は30人くらいの組織で、FORCASのコーポレート機能の立ち上げがミッションでした。2019年12月までFORCASで財務管理、営業管理、人事などのコーポレート業務を担当し、2020年1月からは3事業を統括して見ています。M&Aなどに関わっており、4月には新たに「ミーミル」も統合し、その経営管理も担当しています。

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Q:ユーザベースでは、基本的にサブスクリプション型のビジネスを展開しています。サブスクビジネスをどのように捉えていますか。

ユーザベースでは、B2BのSaaSを提供しています。SaaSは、オンラインで集合知を提供するクラウドと、継続型のサブスクビジネスがかけ合わされたものだと捉えています。継続型のビジネスには、課金モデルとユーザとの嘘のない関係性の2つの側面があります。買い切り型のサービスとは違い、ユーザとの繋がりが継続的なSaaSではユーザに嘘をついたら成り立ちません。常に顧客へ価値を提供し続けなければならないのです。そのためにはカスタマーサクセスが重要になります。ユーザの声に耳を傾け、サービス開発のPDCAをいかに速く回せるかが鍵となります。ユーザからのフィードバックが、サービスに新たな示唆と価値を生んでくれます。そのためユーザと共に成長し、プロダクトやサービスをユーザと一緒に作ることが大事になります。

もう1つ大事なのが、再現性と予測性です。繰り返しになりますが、SaaSは製品なりを一度売って終わりではありません。SaaSでは、期初にその年の売り上げの7割ほどが見えます。それが分かれば、どこにどれくらい投資できるかも明らかになります。非連続的成長のための投資はどう判断すべきか、またM&Aや提携なども自信を持って取り組めるでしょう。これらは、予測性がないと難しい判断になります。

SaaSビジネスを始めた年は、十分なユーザがいないので不確実性は高くなります。しかし1年乗り越えれば、翌年からは解約率なども見えてくるはずです。いかに早い段階で予測性を得られるようにするかが重要です。10社程度のユーザでも、深く見ていけばさまざまなことが見えます。100社全てに深いヒアリングができなくても、少ないユーザの姿を深く見ていけば予測性が得られ、投資もできるようになります。

Q:サブスクビジネスを展開していく上で、苦労する点はありますか。

サービスなりをどの段階からユーザと一緒に作るかが重要なポイントです。今、米国に進出しているサービスがありますが、これはローンチの半年前から既存サービスのユーザと一緒に作っており、このサービスであれば買うと言ってくれるところまで作り込みます。こういうアプローチなしに、サブスクだから儲かるだろうとビジネスを展開すると、失敗するリスクは高くなるでしょう。リスクを小さくするには、マーケットを分析し、これを出せば売れると考えるだけではなく、ユーザをいち早く見つけ、ユーザと一緒に作るのが重要なポイントです。

初期段階でユーザがいるかどうかは、ベンチャーキャピタルの投資にも影響します。ユーザと一緒に始める際には、形に拘る必要はありません。数社しかユーザがいない段階ではきれいなクラウドサービスを作るより、スプレッドシートでも良いのでユーザの求めるものを提供します。始めたばかりでは集合知になっていないので、集約された情報をクラウドから提供するメリットはあまりありません。クラウドの作り込みに手間をかけるより、ユーザの要望に応えることに力を入れ、いち早く改善していくべきです。

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Q:サブスクビジネスを展開する上で、重視していることをおしえてください。

繰り返しになりますが、ユーザと一緒にプロダクトを作ることです。その上でシステム化し、データも駆使して顧客の本心を掴みます。システムが分断しているとデータも分かれて、顧客の本心がなかなか見えません。顧客データを一ヶ所で管理することも重要です。その環境があれば顧客のニーズに応じてアップセルやクロスセルも可能でしょう。サブスクビジネスでは、顧客ニーズに確実に応える必要があります。その上で受注率、解約率をユーザセグメントごとに掴むことが必要となります。

2つ目に大事なのはユーザを理解し、顧客に価値を提供し続けることです。そのためには常に開発チームと相談し、新しい機能を作ります。また、外部データを追加で購入するかもしれません。M&Aなどで大胆に新たな価値の追加も考えます。顧客を理解し、多角的に取り組むことで、新しい価値を生み出し続けるのです

これら2つを実践できる体制づくりも重要です。どの組織にも定型業務があります。たとえば今なら営業担当者がWeb会議を設定し、参加方法を配布しているでしょう。他にもトライアル用IDを営業担当者が発行しているかもしれません。これらの仕事は、必ずしも営業担当がやらなくても良いものです。自動化できれば、営業担当者は本来やるべき顧客ニーズを引き出すヒアリングなどに集中できます。また、さまざまなチームで共通する仕事をシェアード化できれば、業務はさらに効率化します。そのためにもシステム化が必要で、システム化されていればRPAなどと組み合わせて情報連携をしたり、プロセスを自動化できます。組織の仕事をより全体最適化し、顧客中心に進められるようにするのです。

Q:今後サブスクビジネスを伸ばすために、どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか。

新型コロナウイルスの影響で、顧客の情況が大きく変わってきています。今後は、解約されるケースもあるはずです。SaaS業界全体では、解約率が10%ほど上がるとの予測もあります。そのため顧客環境の変化は、丁寧に見ていく必要があります。最も大事なのは、顧客ニーズを深く知ることです。それを改めて考えていく必要があります。

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今後はサービスの壁を取り除き、ユーザベースの総合力で対応することも考えています。そのためにもより一層、顧客視点でカスタマーサクセスを考えます。我々とユーザの距離を縮め、要望などを直接伺う機会や、さらにユーザ同士が交流し、協創する場も用意したいと考えています。こういった活動の中から顧客視点でのプロダクトの発展につなげ、それによりこれからも日本のSaaSビジネスの先頭を切って走っていきたいと考えています。

<プロフィール>

張替 誠司(はりかえ せいじ)

株式会社ユーザベース 執行役員COO(Chief Operating Officer)。2019年3月にユーザベースグループである株式会社FORCASに入社し、コーポレートの立ち上げに携わり、財務管理、営業管理、人事などを担当。2020年1月よりユーザベースにて複数の事業やM&Aなど経営管理を担当している。

<会社概要>

株式会社ユーザベース
https://www.uzabase.com/
概要:ユーザベースは、「経済情報で、世界を変える」ことをミッションに掲げ、2008年に設立。「世界中のビジネス情報をテクノロジーと専門家の力で整理し、ビジネスパーソンの生産性を高め、創造性を解放する事で世界に変革を起こしたい」という志をもって、主幹事業である経済情報プラットフォーム「SPEEDA」や経済ニュースメディア「NewsPicks」を提供しているほか、スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」やB2Bマーケティングプラットフォーム「FORCAS」など全7事業を展開。

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