【トップ対談】トレンドマイクロ大三川副社長が語る、パートナーと築いたシェアNo.1「ウイルスバスター」のサブスクビジネス

今日の先駆者: トレンドマイクロ株式会社 取締役副社長 大三川 彰彦 氏
聞き手: 株式会社オプロ 代表取締役社長 里見 一典

1988年に「デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現」を目的に創業されたトレンドマイクロ(本社:東京都渋谷区)。同社はウイルス対策ソフトウェアを皮切りに、クラウドセキュリティ、ネットワークセキュリティ、IoTセキュリティへとソリューションを拡大し、サイバーセキュリティのリーダー企業としてグローバルにおいてセキュリティ市場を牽引しています。
そしてトレンドマイクロの日本国内におけるビジネス総責任者として活躍しているのが取締役副社長の大三川彰彦氏です。トレンドマイクロでは、セキュリティソフトウェアとしては早い段階からサブスクリプション型ビジネスを展開し、SaaSの提供にも力を入れています。これらのビジネスモデル変革に、トレンドマイクロはどのように取り組んできたのか、大三川氏にオプロ社長の里見がお話を伺いました。

※本インタビューは2020年12月に実施されたものです。

トレンドマイクロは変化に柔軟に対応する文化が定着

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里見
大三川さんはキャリアを始めた最初のDEC(Digital Equipment Corporation社:現ヒューレット・パッカード)に10年、次のマイクロソフトにも10年在籍され、執行役員まで務めました。その後2003年にトレンドマイクロに移られ、日本でのビジネスを牽引されています。トレンドマイクロは、2009年以降はエンドポイントセキュリティ製品の国内市場シェアNo.1の座に君臨しています。

大三川さんはそれぞれの会社で地道にキャリアを積み上げていらっしゃいますね。
 
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大三川
副社長
私が在籍していた当時のDECはミニコンではNo.1、コンピュータメーカーとしても世界第4位で、そこから世界第2位にまで成長しました。会社がどんどん大きくなり日本で新卒が400名、中途入社も600名と一年で1000名近く増えていました。多くの人たちが集うようになり、社内にはさまざまな文化がありました。 そういった文化のおかげで新卒社員は自分たちで考え、判断しながら前に進むことができました。
しっかりした思いがあれば、お客様にもそれが伝わることも学びました。仕事を進める上での基礎のようなものが、DECの10年で培われたと思っています。

マイクロソフトにいた頃も、個人向けから企業向けビジネスに大きく変革する時代で、どんどん社員が増えました。ちょうどWindows NTを世に出す前で、どのように市場を作り出すかというところから考えていました。そしてWindows NTは世界に先駆け日本で成功します。 新しい経験をたくさんさせてもらい、マイクロソフトでは執行役員まで務めさせてもらいました。
 
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大三川
副社長
その後、縁あってスティーブ・チャン(現トレンドマイクロ代表取締役会長)から声がかかり、トレンドマイクロに移ります。トレンドマイクロはスティーブらが米国で創業し、その後本社を日本に移しています。

外資のグローバル企業的なところもありますが、アジア文化もしっかりと理解している企業です。私が入社する際も、スティーブから「パートナー様を大事にしてくれ」と言われました。 日本の文化やビジネスに理解があることで、国内No.1シェアを獲得できたのでしょう。世界の売り上げを見ても、日本の割合はかなり高いものがあります。日本の特性を十分に理解し、競合に比べスピード感を持ってニーズを汲み上げることができています。 トレンドマイクロではさまざまな文化が混じり合っており多様性があるのが当たり前で、変化があっても驚かない文化ができあがっています。

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里見
トレンドマイクロは、セキュリティ製品のSaaS化にかなり早くから力を入れています。こういった取り組みの背景をお聞かせいただけますか。
 
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大三川
副社長
従来は弊社のセキュリティ製品をお客様がサーバーを用意してインストールしている形態でした。これらの運用管理は基本的にお客様が担い、ある程度の負担も伴います。

お客様がそのような課題を抱えている中、弊社のパートナー様はさまざまな製品を顧客企業へサービス型で展開していました。その中にセキュリティ製品も加えることができれば、お客様の管理負担を減らせるはず・・・。そう考え、世界に先駆けて日本でサブスクリプション型のサービスをパートナー様と一緒に始めました。

最初はお客様のもとにサーバーを立て、パートナー様がそれを管理するかたちで始まりました。次にパートナー様の中でサーバーを立て、そこからお客様のクライアントに配信するかたちに変化します。さらにパートナー様が担っている管理の手間を減らすため、トレンドマイクロがサーバーを立てクラウド型で提供するSaaSに移行したのです。

我々のSaaS型のビジネスモデルは、トレンドマイクロとパートナー様の理想から始まったものでもあります。
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里見
SaaS型、サブスクリプション型になると、顧客側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
 
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大三川
副社長
規模の大きな企業であれば自分たちで管理できるでしょう。しかし、とくにSMBであれば代行してもらいたいと考える企業がほとんどです。運用管理をプロに任せばお客様はより安心、安全です。これがSaaSのメリットです。

パートナー様の視点からも管理の手間がなくなり、その分お客様に付加価値を提供することができます。
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里見
2010年という早い時期からSMB向けにSaaSを始めて、その新しいビジネスのスタートが日本からというのはとても誇らしいですね。一方でサブスクリプション型になると、顧客にとっては買い切り型よりもコストが上がるイメージもあるかと思いますが。
 
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大三川
副社長
SaaS型はコスト面でも優れているといえるでしょう。自社で機器やセキュリティを管理する必要がなく管理費用の削減につながり、そのための人件費も節約できます。複数の事業所を持つ企業であれば、すべての拠点に機器を置く必要もなくなります。

SaaS型セキュリティでは、お客様やパートナー様のもとにあったサーバーなどを我々が調達し運用することになります。トレンドマイクロが24時間365日監視し、脅威を見つけるために膨大なデータの分析も行います。集約し効率化され、クラウドインフラとその運用コストも含め、大幅なコスト削減が期待できるでしょう。

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SaaSはお客様にもパートナー様にもトレンドマイクロ自身にもメリットがある

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里見
​SaaSなら新しい脅威にも迅速に対応できるメリットがありますよね。
 
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大三川
副社長
はい、最新の脅威にも対応できます。しかもSaaSならこれをパートナー様などの手間をかけず実現できます。

この体制、実はトレンドマイクロにもメリットがあります。製品に脆弱性がありそれを修正するパッチを提供しても、必ずしも全てのお客様が適用いただけるとは限りません。さまざまな事情がありすぐにパッチを適用できないこともあります。しかしパッチ適用せず脆弱性があるままお客様が運用し続けるとセキュリティリスクがあります。SaaSならお客様は意識せずに最新版を利用でき、リスクも減少するのです。

とはいえ、全てがSaaSになるとは考えていません。オフィスで利用するサーバーやPCだけでなく、今はさまざまなものがインターネットに接続されます。工場などがつながるようになると、中にはレガシーな専用機器などもありそういったものも脅威から守らなければなりません。可能なものはクラウドから監視し守りますが、そうでないものはオンプレミスで守ることになります。

今後は街中の信号機や走っているクルマもつながります。システムによってはクラウドにつなぎ対策をするのではなく、エッジ側で判断しリアルタイムに保護する必要があります。クラウドとエッジをミックスした環境の保護を、トータルで考える必要があるのです。
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里見
ところで経営的な側面から見た場合、サブスクリプションとパッケージがあると内部でカニバってしまい、営業担当者が売りにくいなどの懸念はありませんか。
 
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大三川
副社長
経営面から見て重要なのは、月額で費用をもらうか先に全額もらうかではなく、お客様のカバレッジです。そして、カバーしたお客様の継続性が重要です。

トレンドマイクロでは、1年契約なら1年分全額を最初に売り上げるのではなく、1/12が毎月入るよう計算してきました。これが3年なら1/36です。サブスクリプションだと、最初に何年分かが見えにくくなりますが、契約継続率が分かれば、先の売り上げ数字は安心して見ていられます。営業に対しても、きちんとした継続率が見えていれば、その分を1年分の売り上げ成績と見なせば良いのです。

重要なのは、お客様の数と契約継続率です。解約を防ぎ、継続率を管理できれば問題ありません。そうすればサブスクリプションが増えても将来的な売り上げは見えてきます。

既に中堅中小向けのエンドポイントセキュリティ製品は、日本ではサブスクリプションの売り上げ割合が多くなっています。大手向けもこれから増えてくるでしょう。

セキュリティサービスのプラットフォーマーを目指す

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里見
今後の取り組みについて教えてください。トレンドマイクロはどのような企業になろうとしているのでしょうか。
 
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大三川
副社長
トレンドマイクロは、セキュリティサービスのプラットフォーマー的な存在になりたいと考えています。

ものがつながる世界が拡がっています。さまざまなデータが集まり、脅威やリスクなどを判断することになります。データが膨大になり、もはや人間では判断できません。ここでAIや機械学習を活用します。
トレンドマイクロの製品から収集される膨大なデータを使って、瞬時に判断し対処する取り組みは既に実施しています。
今後は他社の製品も含めデータを集めて判断し、対処できるようにします。

これを実現するためにセキュリティプラットフォームを目指そうとしています。セキュリティをプラットフォーム化することで、オンプレミスやエッジとクラウドのハイブリッドの環境を守る、IoTも含めた広範な環境を守るには、これまで総合セキュリティベンダーとして取り組んできた我々の知見が生かせると考えています。
 
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大三川
副社長
またリスクの判断やコンプライアンスに対する要求も企業によりそれぞれです。インダストリーごとに判断基準も異なります。そういった課題に対応するために、それぞれのインダストリーに知見を持つパートナー様と一緒に取り組んでいます。その上で、新しいことに柔軟に対処できるビジネスモデルも考えています。
DEC時代に営業として訪問していた工場などの現場に、最近はセキュリティのビジネスのために再び赴くようになっています。
 
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大三川
副社長
さらに2020年11月24日に、セキュリティイノベーションを推進する組織として「Cybersecurity Center of Excellence」を設立しました。これは世界的に高まるセキュリティファーストの要求に応え、法人組織のセキュリティイノベーション推進を支援する組織です。

Cybersecurity Center of Excellenceは3つのセンターで構成されます。

トランスペアレンシー・センターではトレンドマイクロが提供する製品・サービスの部材調達、製造、販売、利用時などサプライチェーン全体における様々な安全性評価を行います。また、当社内で培ったベストプラクティスを体系化し、お客様やパートナー様へ提供することで、日本国内の法人組織がセキュリティイノベーションを推進し、安心、安全なデジタルトランスフォーメーションを実現するための支援を行う予定です。

スレット・インテリジェンス・センターは、日本国内を標的にした高度なサイバー攻撃、国家が背景にあるサイバー攻撃者、特定企業から窃取された情報、特定企業へサイバー攻撃を行うための情報など、日本国内の法人組織がサイバー攻撃を受ける可能性がある情報をグローバル及びリージョン双方の視点で各地域の特性・地政学的特徴を踏まえた脅威分析を行い、該当の法人企業や政府機関、セキュリティ団体に提供することで、防御及び対策強化に寄与します。

セキュリティ・ナレッジ&エデュケーション・センターでは、法人組織の一般社員、セキュリティ担当者、CISO(Chief Information Security Officer)、戦略マネジメント層に加えて経営層にもサイバーセキュリティを考える必要があることを伝えます。
 
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大三川
副社長
現在、セキュリティリスクにはさまざまなものがあり、経営層もそれを意識する必要があります。経営もビジネスも常に「プラスセキュリティ」で取り組めるよう、トレンドマイクロの経験値を持ってサポートしていきます。里見さんとも、こういった取り組みを一緒にできれば良いですね。
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里見
​何かご一緒にできるよう、我々も頑張っていきます。
本日はためになるお話を本当にどうもありがとうございました。

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